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甲状腺機能低下症の症状チェックリスト|当てはまったら受診の目安は?
疲れやすさ・寒がり・むくみ・体重増加などの不調が続くとき、まずは下のセルフチェックで気になる症状を確認してみましょう。ただし、こうしたチェックはあくまで「気づきのきっかけ」であり、甲状腺機能低下症かどうかを確定するには血液検査(TSH・FT4)が欠かせません。チェックで当てはまる項目が多くても少なくても、それだけで病気の有無は決められない、という点を最初にお伝えしておきます。
この記事では、次の3点を学会などの一次情報をもとに整理してお伝えします。
- 甲状腺機能低下症で出やすい代表的な症状とセルフチェックリスト
- 症状が加齢・更年期・うつなど他の原因と紛らわしいこと、確定診断には血液検査が必要なこと ・受診を考える目安
- 何科に行けばよいか、橋本病との関係や放置のリスク
「なんとなく続く不調が病気なのか、気のせいなのか分からない」という方に、症状の意味と受診の目安の全体像を先にお示しします。読み終えたときに、次にとるべき行動が落ち着いて選べるようになることを目指しています。

そもそも甲状腺機能低下症とは?甲状腺ホルモンが不足する状態
甲状腺機能低下症とは、のどの近くにある甲状腺から分泌される「甲状腺ホルモン」が不足し、全身の代謝がゆっくりになってしまう状態です。甲状腺ホルモンは体のエネルギー調整に関わるため、不足すると疲れやすさ・寒がり・むくみといった多彩な症状が現れます。まずは甲状腺ホルモンの役割を知ることが、後半のセルフチェックを正しく読み解く土台になります。
甲状腺ホルモンの役割と「代謝が下がる」とはどういうことか
甲状腺は、のどぼとけの下にある蝶のような形をした小さな臓器で、全身の代謝を調整する甲状腺ホルモンを分泌しています。代謝とは、体が食べたものをエネルギーに変えたり、体温を保ったり、心臓や胃腸を動かしたりといった、生きるための働き全般のことです。
この甲状腺ホルモンが不足すると、体全体の働きがいわば「省エネモード」になり、動きがゆっくりになります。その結果、疲れやすさや寒がり、むくみ、便秘など、一見バラバラに見える症状が同時に現れることがあります。日本内分泌学会の一般向け解説でも、甲状腺ホルモンの低下によって代謝が落ち、こうした全身の症状がみられると説明されています。症状が多彩なのは、甲状腺ホルモンが体のあちこちで働いているためだと理解しておくと、以降のチェックリストが読みやすくなります。
【セルフチェック】甲状腺機能低下症で出やすい症状リスト
甲状腺機能低下症で出やすい症状を、代表的な12項目のチェックリストにまとめました。当てはまるものにチェックを入れて、自分の状態を整理してみてください。ただし、当てはまる数が多いからといって病気と決まるわけではなく、逆に少なくても油断してよいわけではありません。あくまで受診を考えるきっかけとして活用しましょう。
当てはまる項目をチェックしてみましょう(代表的な12の症状)
次の症状のうち、最近続いているものはありますか。気になる項目にチェックを入れてみてください。
- 疲れやすい・体がだるい
- 寒がりになった・冷えを感じやすい
- 食欲は変わらないのに体重が増えた
- 顔や手足がむくむ
- 便秘がちになった
- 皮膚が乾燥する・カサつく
- 髪が抜けやすい・薄くなった
- 気分が落ち込む・やる気が出ない
- 物忘れが増えた・頭がぼんやりする
- 脈がゆっくりになった気がする
- 月経が不順・経血量が変わった(女性の場合)
- 声がかすれる・低くなった
これらは甲状腺ホルモンの不足によって代謝が落ちることで起こりやすい症状です。ただし、いずれも他の原因でも起こりうるありふれた不調でもあります。
いくつ当てはまったら?チェックの見方と注意点
「何個当てはまったら病気なのか」を気にされる方は多いですが、実は当てはまる数だけで甲状腺機能低下症を判断することはできません。甲状腺の専門病院でも、疲れやすさやむくみといった全身に共通する症状に加え、甲状腺機能の低下でみられやすい症状がいくつか重なる場合に、血液検査でホルモン値を確認することをすすめる、という考え方が示されています。つまり、チェックはあくまで「検査を受けるかどうかを考える目安」なのです。
外来では、当てはまる項目が多かったために強く不安を感じて来院される方もいれば、「1つか2つしか当てはまらないから大丈夫だろう」と受診をためらううちに、症状が長引いてしまう方もいます。大切なのは数の多さそのものではなく、気になる症状が数週間以上続いているかどうかです。
当てはまる項目が複数あっても、それだけで病気と決まるわけではありません。逆に、当てはまる数が少なくても、日常生活に支障が出るような不調が続くなら、受診して検査を受ける意味は十分にあります。チェックの結果に一喜一憂しすぎず、「続いているかどうか」を判断の軸にしてください。
チェックに当てはまっても確定診断ではない|診断には血液検査(TSH・FT4)が必要
セルフチェックで多くの項目に当てはまっても、それは甲状腺機能低下症の確定診断ではありません。診断には、血液中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)と遊離T4(FT4)を測る血液検査が必要です。なぜなら、症状の出方には大きな個人差があり、症状だけでは客観的に判断できないからです。ここが、自己判断で完結させずに医療機関で確かめてほしい最も重要なポイントです。
なぜセルフチェックだけでは判断できないのか
甲状腺機能低下症の症状の現れ方には、人によってかなりの幅があります。多くの症状がそろう人もいれば、ほとんど自覚症状がないまま健康診断などで偶然見つかる人もいます。
そのため、「症状が多いから低下症だ」「症状が少ないから違う」と、症状の有無だけで判断することはできません。症状が軽くても甲状腺ホルモンが不足していることもあれば、症状があっても甲状腺は正常で別の原因のこともあります。だからこそ、体の状態を客観的な数値で確かめる血液検査が必要になるのです。
血液検査でわかること(TSHとFT4)
甲状腺ホルモンが足りているかどうかは、血液中の2つの値で評価します。1つは甲状腺に指令を出す「TSH(甲状腺刺激ホルモン)」、もう1つは甲状腺から分泌される「FT4(遊離T4)」です。
日本甲状腺学会の診断ガイドラインや日本内分泌学会の解説によれば、一般的な原発性の甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモン(FT4)が低くなり、それを補おうとして脳から出るTSHが高くなる、という組み合わせがみられるとされています。体が「ホルモンが足りないぞ」と甲状腺に指令を強めるため、TSHが高値になるイメージです。
また、FT4は基準の範囲内なのにTSHだけが高い、という軽い段階もあり、これは「潜在性甲状腺機能低下症」と呼ばれます。TSHとFT4を組み合わせて評価するのは、甲状腺そのものの問題なのか、脳からの指令の側の問題なのかを見分ける意味もあるためです。市販の症状チェックや家庭の体重計・体温計ではこうした値は分からず、医療機関での採血が必要になります。こうした値の読み分けは専門的な判断を要するため、検査結果は自己解釈せず、医師の説明を受けることが大切です。
その症状、本当に甲状腺?加齢・更年期・うつと紛らわしい理由
甲状腺機能低下症の症状は、加齢・更年期・うつ・貧血など、他の原因でも起こりやすいありふれたものばかりです。そのため、「年齢のせい」「疲れているだけ」と思い込み、受診が遅れてしまうことが少なくありません。症状が他の原因と重なりやすいことを知っておくと、必要な検査にたどり着きやすくなります。
症状が他の原因と重なりやすいポイント
疲れやすさ・むくみ・体重増加・気分の落ち込み・冷えといった症状は、甲状腺機能低下症だけに特有のものではありません。加齢による体力の変化、更年期のホルモンバランスの乱れ、睡眠不足、ストレス、貧血など、さまざまな要因で同じような不調が起こりえます。
この「重なりやすさ」が、甲状腺機能低下症の見つけにくさにつながっています。多くの人が最初に「歳のせいかな」「疲れがたまっているだけ」と考えてしまい、甲状腺の可能性に気づかないまま時間が過ぎてしまうことがあります。症状が続くのに原因がはっきりしないときは、選択肢の一つとして甲状腺を思い出してみてください。
健康診断の「コレステロール高値」「貧血」が手がかりになることも
自覚症状だけでなく、健康診断の結果が甲状腺機能低下症に気づくきっかけになることもあります。甲状腺ホルモンが不足して代謝が落ちると、コレステロール値が上がりやすくなることが知られています。
食生活や運動に気をつけているのにコレステロールが高い、あるいは貧血を指摘された、という場合には、その背景に甲状腺機能の低下が隠れている可能性もあります。もちろん、これらの検査値が高いからといって必ず甲状腺の病気があるわけではありませんが、生活習慣だけでは説明のつかない異常値が続くときは、甲状腺の検査を検討する手がかりになります。健診結果に気になる項目があれば、医療機関で相談してみるとよいでしょう。
原因として多い「橋本病」とは?放置するとどうなる
甲状腺機能低下症の原因としてよく知られているのが「橋本病(慢性甲状腺炎)」です。免疫の異常によって甲状腺に慢性的な炎症が起こり、甲状腺ホルモンが作られにくくなる自己免疫の病気で、女性に多いとされています。ここでは橋本病との関係と、放置した場合に考えられる影響を、不安を煽らず中立にお伝えします。
橋本病(慢性甲状腺炎)と甲状腺機能低下症の関係
橋本病は、本来は体を守るはずの免疫が誤って自分の甲状腺を攻撃してしまい、甲状腺に慢性的な炎症が起こる自己免疫疾患です。日本内分泌学会の解説によれば、橋本病は甲状腺の慢性的な炎症により甲状腺ホルモンが不足しやすくなる病気で、女性に多くみられるとされています。
橋本病があっても甲状腺の働きが保たれている人も多く、その場合は特別な治療をせず経過をみることになります。一方で、炎症が進んで甲状腺ホルモンが不足すると、この記事で挙げてきたような症状が現れ、甲状腺機能低下症と診断されます。つまり橋本病は、甲状腺機能低下症の代表的な原因の一つという位置づけです。甲状腺の抗体を調べる血液検査などによって、橋本病が背景にあるかどうかを確認できることもあります。「橋本病=すぐに治療が必要」というわけではなく、甲状腺の働きが実際にどうなっているかを検査で確かめたうえで、経過観察か治療かを判断していきます。
放置のリスクと「潜在性甲状腺機能低下症」
甲状腺ホルモンの不足を放置すると、代謝が落ちた状態が続き、コレステロール値が上がりやすくなったり、心臓に負担がかかったりすることがあると指摘されています。症状が軽いからと安心せず、続く不調は一度確かめておくことが大切です。
先に触れた「潜在性甲状腺機能低下症」(FT4は正常でTSHだけが高い軽い段階)は、必ずしもすぐ治療が必要とは限らず、経過をみることも多い状態です。ただし、一部は年月をかけて本格的な低下症へ進むことがあるため、定期的な確認がすすめられる場合があります。
自然に治るかどうかは原因によって異なり、一過性のものもあれば、橋本病のように長く付き合っていくものもあります。いずれにしても、進行の有無や治療の要否は数値と経過をみて医師が判断するものですので、自己判断で放置したり過度に心配したりせず、医療機関で評価を受けることをおすすめします。
受診を考える目安と「何科」に行けばいい?
気になる症状が続くときや健診で異常を指摘されたときは、受診を検討するタイミングです。甲状腺の不調は、内分泌内科や甲状腺を専門に診る医療機関で相談できます。ここでは、どんなときに受診を考えればよいか、そして何科を選べばよいかを整理します。過度に受診を急がせるものではなく、判断の目安としてお読みください。
こんなときは受診を検討しましょう
次のような場合は、一度医療機関で相談することを検討してみてください。
・疲れやすさ・寒がり・むくみ・体重増加などの気になる症状が、数週間以上続いている
・健康診断でコレステロール高値や貧血など、気になる項目を指摘された
・妊娠を希望している、または妊娠中で甲状腺の状態を確認しておきたい
これらはあくまで目安であり、当てはまらなくても不調がつらいと感じるなら受診して構いません。「これくらいで病院に行ってよいのだろうか」とためらうより、気になる段階で相談したほうが、結果的に安心につながります。
受診する科の選び方(内分泌内科・甲状腺専門外来)
甲状腺の不調は、ホルモンの病気を専門とする内分泌内科や、甲状腺を専門的に診る医療機関で相談するのが基本です。血液検査で甲状腺ホルモンの状態を確認し、必要に応じて超音波検査などを組み合わせて評価していきます。
どこを受診すればよいか迷う場合は、まずかかりつけの内科で相談し、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらう方法もあります。当院は内分泌代謝・甲状腺の診療に取り組んでおり、甲状腺の症状や検査についてのご相談にも対応しています。気になる症状が続く場合は、無理なく相談できる医療機関を選んでください。
よくある質問(FAQ)
甲状腺機能低下症について、よく寄せられる質問にお答えします。いずれも一般的な情報であり、実際の診断や治療は医師の診察のもとで判断されます。
Q. 甲状腺機能低下症と診断された場合、どのような治療を行いますか?お薬は一生飲み続ける必要がありますか?
不足している甲状腺ホルモンを、飲み薬(甲状腺ホルモン薬)で補う補充療法が基本です。血液検査の値を見ながら量を調整し、体内のホルモンを適切な範囲に保つことを目指します。服用する期間は原因によって異なり、一過性の低下では中止できることもありますが、橋本病などによって不足が続く場合は、長期にわたって内服を続けることが多いとされています。自己判断で中止すると症状がぶり返すことがあるため、続け方や量は必ず医師と相談してください。
Q. 妊娠との関わりはありますか?
甲状腺ホルモンは、妊娠の経過や胎児の発育に関わることが知られています。そのため、妊娠を希望する方や妊娠中の方は、甲状腺の状態を確認しておくと安心です。甲状腺機能低下症があっても、適切に管理しながら妊娠・出産をされている方は多くいます。妊娠を考えている場合は、早めに医療機関で甲状腺機能を確認しておくとよいでしょう。
Q. 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)とは違うのですか?
はい、逆の状態です。甲状腺ホルモンが「過剰」になるのが甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)で、動悸・汗をかきやすい・体重減少などがみられます。一方、ホルモンが「不足」するのが甲状腺機能低下症で、寒がり・むくみ・体重増加などが現れやすくなります。同じ甲状腺の病気でも、ホルモンの過不足の向きが反対だと理解しておくとよいでしょう。
甲状腺機能低下症と甲状腺機能亢進症の違い
| 項目 | 甲状腺機能低下症 | 甲状腺機能亢進症(バセドウ病) |
|---|---|---|
| ホルモン | 不足 | 過剰 |
| 代謝 | ↓ 下がる | ↑ 上がる |
| 主な症状 | 寒がり・むくみ・体重増加・便秘・気分の落ち込み・脈がゆっくり | 暑がり・汗をかきやすい・体重減少・動悸・脈が速い |
※いずれも血液検査で確認する。
Q. 食事や日常生活において、ヨード(昆布や海藻類)の摂取などで気をつけることはありますか?
ヨード(ヨウ素)は甲状腺ホルモンの材料となる成分で、昆布やわかめなどの海藻類に多く含まれます。日常的な食事の範囲であれば神経質になる必要はありませんが、昆布だしや海藻を極端に大量にとり続けると、甲状腺の働きに影響することがあります。とくに橋本病がある場合は、ヨードのとりすぎに注意が必要とされることがあります。一方で、過度に制限する必要もなく、バランスのよい食事が基本です。具体的な注意点は体質や病状によって異なるため、気になる場合は主治医に確認してください。
まとめ|気になる症状が続くなら、チェックを入口に受診を
甲状腺機能低下症は、疲れやすさ・寒がり・むくみ・体重増加など、多彩でありふれた症状が現れる病気です。セルフチェックで当てはまる症状があり、それが続く場合は、自己判断で済ませず、内分泌内科や甲状腺専門外来で血液検査を含めた相談を検討してみてください。
大切なのは、チェックはあくまで気づきのきっかけであり、確定診断には血液検査(TSH・FT4)が必要だということです。当てはまる数の多さに一喜一憂するより、「気になる不調が続いているか」を基準に、落ち着いて次の一歩を選んでいただければと思います。
参考文献
監修者情報
緑地公園いまだ内科・糖尿病甲状腺クリニック 院長
今田 侑
TASUKU IMADA
専門分野
- 糖尿病・高血圧症・脂質異常症などの生活習慣病
- 内分泌疾患(甲状腺・副腎・下垂体・性線)
- 肥満治療
- 総合内科診療
- 救急疾患
経歴
- 甲陽学院高等学校 卒業
- 大阪大学医学部医学科 卒業
- 関西労災病院 初期研修
- 関西労災病院 糖尿病内科・救急救命科
- 大阪大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌・代謝内科
- 大阪大学大学院医学系研究科 内分泌代謝内科学 博士課程修了
- 関西労災病院 内科医長
- いまだ内科クリニック開院
所属学会・資格等
- 医学博士(大阪大学)
- 日本内科学会 総合内科専門医・内科指導医
- 日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
- 日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・指導医
- 日本肥満学会
