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脂肪肝を放置するとどうなる?肝硬変への進行や全身への影響
こんにちは、緑地公園いまだ内科・糖尿病甲状腺クリニック院長の今田 侑(いまだ たすく)です。
健診で脂肪肝と言われても、とくに症状がないため、「そのうち何とかなるだろう」と受診せずに過ごしてしまう方は少なくありません。脂肪肝は初期にはほとんど自覚症状がなく、日常生活で困ることもほとんどありません。痛みや発熱などもないため、「今は忙しいからまた今度でいいか」と考えてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、脂肪肝は”沈黙の臓器”と呼ばれる肝臓だからこそ気付きにくい病気です。症状がないまま少しずつ進行し、気付いたときには肝臓のダメージがかなり進んでいることもあります。
さらに近年では、脂肪肝は肝臓だけの病気ではなく、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病と深く関わる全身の病気であることが分かってきました。
健康診断で脂肪肝を指摘されたということは、生活習慣を見直す大切なサインとも言えます。
このコラムでは、脂肪肝を放置した場合に何が起こるのか、なぜ早めの対応が大切なのかを、できるだけわかりやすくお伝えします。

そもそも脂肪肝とはどういう状態か
肝臓は、栄養の代謝やエネルギーの貯蔵、アルコールや薬の分解、タンパク質の合成など、生命を維持するために欠かせない働きを担っています。
本来、肝臓には脂肪はほとんど蓄積していません。しかし、食べ過ぎや運動不足、肥満、糖尿病、飲酒などの影響によって肝臓に中性脂肪がたまり、肝細胞の5%以上に脂肪が蓄積した状態を脂肪肝と呼びます。
脂肪肝は大きく二つに分けられます。
一つは、お酒の飲み過ぎが原因となるアルコール性脂肪肝です。
もう一つは、飲酒量がほとんどない方にも起こる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)です。肥満だけでなく、糖尿病や脂質異常症、高血圧などの生活習慣病と深く関係しており、日本人の約3割が該当するといわれています。
「お酒を飲まないから脂肪肝にはならない」と思われがちですが、実際には飲酒習慣のない方でも脂肪肝になることは珍しくありません。
そして大切なのは、脂肪肝は単に脂肪がたまっているだけでは終わらないことがある、という点です。
放置するとどのように進行するのか
脂肪肝の進行は、一般的に次のような経過をたどります。
脂肪肝 → 脂肪性肝炎(NASH)
脂肪肝のすべてが進行するわけではありませんが、一部の方では肝臓に炎症が起こり、「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」へと進行します。
NASHでは、脂肪の蓄積だけでなく肝細胞が傷つき、肝臓が少しずつ硬くなる「線維化」が始まります。
この段階になっても、自覚症状はほとんどありません。倦怠感や右脇腹の違和感を感じる方もいますが、多くは健康診断の血液検査や腹部超音波検査で偶然見つかります。
脂肪性肝炎 → 肝硬変
炎症が長期間続くと、肝臓全体が線維組織に置き換わり、「肝硬変」へと進行します。
肝硬変になると、肝臓の働きが十分に行えなくなり、腹水、黄疸、食道静脈瘤、肝性脳症など、さまざまな合併症を引き起こすようになります。
ここまで進行すると、元の状態まで回復させることは難しく、重症例では肝移植が必要になることもあります。
肝硬変 → 肝臓がん
さらに肝硬変の状態では、肝細胞がんを発症するリスクも高くなります。
以前はB型肝炎やC型肝炎が肝臓がんの主な原因でしたが、近年ではNASHを背景とした肝臓がんが増加しており、大きな問題となっています。
このように、脂肪肝は放置することで「脂肪がついているだけ」の状態から、命に関わる病気へと進行する可能性があります。
肝臓だけではない——全身への影響
脂肪肝が怖いのは、肝臓だけの病気ではないことです。
脂肪肝ではインスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」が進みやすく、2型糖尿病の発症や悪化につながります。
また、全身の炎症によって動脈硬化も進みやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患のリスクも高まることが分かっています。実際に、脂肪肝の患者さんの死因として最も多いのは肝臓の病気ではなく、心血管疾患であるという報告もあります。
さらに近年では、慢性腎臓病や睡眠時無呼吸症候群との関連も報告されており、脂肪肝は全身の健康に影響する代謝疾患として考えられるようになっています。
どうすれば改善できるのか
幸いなことに、脂肪肝の段階であれば改善は十分に期待できます。
治療の基本は生活習慣の改善です。体重を現在の5〜10%程度減らすだけでも、肝臓に蓄積した脂肪が減少し、肝機能の改善が期待できます。
具体的には、
- 食べ過ぎを避け、バランスの良い食事を心がける
- ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にする
- 筋力トレーニングを取り入れる
- 飲酒量を見直す
といったことが基本になります。こちらの詳しい内容は「生活習慣を見直す基本|食事・運動療法と無理なく続けるポイント」で紹介していますので、併せてご覧ください。
糖尿病や脂質異常症、高血圧を合併している場合には、それらを適切に治療することも脂肪肝の改善につながります。
最近では、糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬が肝脂肪の改善にも有効であることが報告されており、患者さんの状態に応じて治療を組み合わせることもあります。
大切なのは、「症状がないから大丈夫」と考えず、早い段階で生活習慣を見直すことです。
最後に
脂肪肝は、放置すると脂肪性肝炎、肝硬変、肝臓がんへと進行する可能性がある病気です。
また、肝臓だけではなく、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病とも深く関わっています。
一方で、脂肪肝の段階であれば、生活習慣の改善によって十分に回復が期待できます。
健康診断で「脂肪肝」「ALT(GPT)高値」「γ-GTP高値」などを指摘された場合は、「症状がないから大丈夫」と考えず、一度詳しく調べてみることをおすすめします。
緑地公園いまだ内科・糖尿病甲状腺クリニックでは、血液検査と腹部超音波検査を組み合わせて脂肪肝の程度や進行の有無を評価し、患者さん一人ひとりに合わせた生活習慣改善や治療をご提案しています。
気になる結果があった方は、お気軽にご相談ください。
※近年、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:Metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)」という名称へ変更されました。本コラムでは、患者さんに広く知られているNAFLDという名称を用いて解説しています。
